インターネット上の発言と法的責任:加害者の特定(2)|知っておかないと損をする中小企業経営の為の法律情報 法律コラム|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
自分(自社)がインターネット上の発言等により名誉毀損などの被害者となった場合に、発言者=加害者に対して損害賠償を請求しようとすると、どのように発言者を特定するかという問題が出てきます。今回及び次回で、発信者の情報を取得するための法的手続きについて解説します。
【プロバイダ責任制限法による発信者情報開示請求権】
前回、技術的観点からは、IPアドレスなどにより、ネット掲示板や動画共有サイトに投稿した人を特定していくことは、ある程度可能であるということを説明しました。実際に、京都大学入試事件や尖閣ビデオ流出事件では、警察は最終的に投稿者にたどりついています。
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しかしながら、電気通信事業者などは法律によって通信の秘密を守る義務が課されており、プロバイダや携帯電話会社などは、通信の秘密を重視して、簡単には発信者に関する情報の開示には応じません。警察などの捜査機関であっても、裁判所の令状が必要となる場面が少なくなく、ましてや一般の私人が単に問い合わせるだけでは、開示に応じることはほとんどないでしょう。そもそも、発信者情報は発信者のプライバシーに関わるものであり、誰かが「名誉毀損だ!」と言っているからといって、プロバイダ等が安易に発信者の情報を開示していたのでは、安心してインターネットを利用することはできません。そのために発言が萎縮してしまっては、表現の自由との関係でも問題です。
とはいえ、被害者の泣き寝入りを放置するというのも問題です。そこで、2001年に成立したプロバイダ責任制限法で、被害者、情報発信者、プロバイダ等の置かれた立場に配慮しながら、一定の要件のもとで、発信者情報の開示請求権が定められました。
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【発信者情報開示請求権が認められる要件】
ある情報がネット掲示板に掲載される等したことにより権利を侵害された(名誉毀損などの被害を受けた)と主張する人は、次の2つの要件を両方とも満たす場合に、その情報の発信者情報の開示を請求することができます。
(1)その情報の流通によって開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであること。
(2)発信者情報が開示請求者の損害賠償請求権行使のために必要であるなど、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること。
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(1)で単に「権利が侵害された」というだけでなく、それが「明らか」であることまで要求しているのは、情報が開示される発信者のプライバシーや表現の自由に配慮してのことです。プロバイダ等が判断を誤って情報を開示してしまうと、それを元に戻すということは不可能なことから、より慎重な要件が定められました。
(2)は、何らかの形で私的制裁を加えるような目的の場合、既に損害賠償が支払済みの場合、損害賠償請求権が時効消滅しているような場合などには、開示請求者が発信者情報を入手する(情報入手に方が助力する)合理的な必要性を欠くことから、定められた要件です。
こうした要件を満たす請求に対しては、プロバイダ等は、開示請求者との関係では開示義務を負い、情報発信者との関係では守秘義務が解除されて発信者情報を開示することができることになります。
また、この発信者情報開示請求権は実体法上の「権利」とされており、プロバイダ等が任意に応じない場合は訴訟を行うことができ、開示請求を認容する判決に基づいて強制執行を行うこともできます。さらに、上記(1)(2)の要件を満たすにもかかわらずプロバイダ等が開示請求に応じない場合は、権利侵害として損害賠償責任が問われる可能性もあります(ただし、プロバイダ責任制限法で一定の限定がなされています。次回、解説します)。
次回は、この発信者情報開示請求権に基づき、具体的にどのように発信者情報開示請求の手続きを行うかを解説します。
氏名:石井邦尚
生年:1972年生
弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属
学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了
得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。
所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/
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