365日映画:シェルタリング・スカイ
イタリアの大監督、ベルナルド・ベルトルッチの監督作品です。
主演は、デブラ・ウィンガー。
日本で一番素晴らしい映画評論家は、
1998年に亡くなられた淀川長治さんです。
この淀川長治さんは、映画人として、
映画のよさをを広く世間に伝えることに尽力しただけでなく、
1936年、第二次世界大戦終戦以前の時代に、
アメリカへの帰港中、日本へ極秘の休暇に寄港した、
あこがれのC・チャップリンに会いたいが為、
面識も、コネクションもなく、いち雑誌記者であるだけですのに会いに行きます。
そして本人に会う夢がかなっただけでなく、C・チャップリンの日本見物の案内役までつとめ、
「ラヴソング」さながらのロマンティシズムを持ち合わせた人でもあります。
その眼は、晩年の1990年代に入っても確かで、
現在、DVD化もされていない、
「他人のそら似」「世にも憂鬱なハムレットたち」を評価し、
「エビータ」「さらば、わが愛 覇王別姫」「ケッログ博士」
「太陽の少年」「二十日鼠と人間」」「タンゴ」を高く評価しています。
ニューヨークのトップの才能機関
そしてこの淀川長治さんは、映画を褒めるとき、
形容として、ぽんぽんと古い映画や映画人の名を口にします。
ウィリアム・ワイラー、B・ワイルダー、J・フォード、D・W・グリィフィス、
もっと古い時代の映画や映画人の名前もよく口にしました。
お年を考えれば、1909年生まれ、思い出がすぐ口に出ることも素敵なこととも思えます。
ただ、その晩年の1990年代において、" 美しい映画 "として、
淀川長治さんが、よく形容していた映画が、比較的新しい映画、「シェルタリング・スカイ」です。
ことあるごとに、この「シェルタリング・スカイ」を引き合いに出していました。
北アフリカ、そこにあるアメリカ人夫婦が訪れます。
「観光ですか?」との問いに、
「観光客は、旅に出て、帰ることを考える人たちだ、
わたしたちは、帰ることを考えていない、いまのところは」と夫は答えます。
──アフリカと砂漠。
映画は、おもしろくもなく、楽しくもなく、不可解です。とても感覚的な映画です。
しかし、それでもなんとか映画後半までは見ていくことはできます。
──そして、映画は言葉をなくします。
映画にセリフを喋る場面がなくなります。とても長い時間。やがて時間を忘れます。
強姦された女性の実話
歩いていく、妻ひとりだけで、どこに?、もなく、
ただ、砂漠と霞んだ太陽に身を任せ、
砂、白い石の建物、迷宮、イスラムの黒い衣装、衣装隙間から覗く目、言葉はなく、
ただ、ただ、これが、" 変わっていく "ということであるのか。
──美しい映像。
人が変わっていく姿が確かに映し出される。それは" 堕ちていく "ものであるのか、
環境に適合する為の" 幸福への変化 "なのか、それはわからない。ただただ映し出される。
いい映画です。
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シェルタリング・スカイ (1990)
監督 ベルナルド・ベルトルッチ
製作 ジェレミー・トーマス
製作総指揮
ウィリアム・アルドリッチ
原作 ポール・ボウルズ
脚本 ベルナルド・ベルトルッチ、マーク・ペプロー
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
音楽 坂本龍一、リチャード・ホロウィッツ
出演 デブラ・ウィンガー
ジョン・マルコヴィッチ
ジル・ベネット
キャンベル・スコット
ティモシー・スポール
エリック・ヴュ=アン
フィリップ・モリエ=ジュヌー
トム・ノヴァンブル
ニコレッタ・ブラスキ
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物語
デビッド聖体赤褐色とは何か
第二次世界大戦終戦後の1947年、北アフリカ。
ニューヨークからやって来た作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)
とその妻で劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)の目的は単なる観光ではなく、
求めるべき夢さえ失なった彼らの深い喪失感を文明と隔絶し、果てしない拡がりを持った
違う世界で癒すためだった。
その旅の連れとなったのがポートの友人で上流社会に属するタナー(キャンベル・スコット)。
結婚して10年、夫との心のすれ違いを感じるキットに、かねてより彼女に心を寄せる
タナーは接近してゆく。やがて3人は次の目的地に向かうが、ホテルで同宿したイギリスの
トラベル・ライター、ライル夫人とその息子で母親から金をせびってばかりいる
エリックと同じ車に乗ったポートに対して、キットとタナーは別行動をとった。
そしてそこでついにキットとタナーは一夜を共にする。が、アフリカ奥地の風土に
嫌気がさしていたタナーは別の土地へ向かい、二人きりになったポートとキットは
彼らの心の虚無を象徴するかのようなアフリカの蒼穹の空の下でひととき愛を
確認したかにみえたが、それもつかの間、ポートの体はチフスにむしばまれていたのだった。
医者もいない砂漠の果ての町でポートは息絶える。ついに一人きりになったキットの旅は、
しかしまだ続く。
何もない砂漠の荒寥を自らの内面と一体化したかのようにアラブ人の隊商の中に身を埋め、
男と体を重ねる彼女の眼はもはや何ものも映し出さないかのようであった。
そんな彼女の行方を探すタナーの手でやっとキットは砂漠からタンジールへと連れ戻される。
が、もはや彼女はもとの自分へと返ることなどできない。タナーが一瞬目を離すと
もはや彼女の姿はどこにもなかった。
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Story
ベルトルッチ監督、J・マルコヴィッチ、D・ウィンガー主演のエキゾチックなラブストーリー。倦怠した夫婦が新たな発見を求めて、ニューヨークから北アフリカへ旅に出るが…。安らぎを得ようとする2人には過酷な運命...
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