ポンコツ映画愛護協会『奪還 DAKKAN アルカトラズ』
主演のスティーヴン・セガールが製作にも携わり、香港からション・シンシンをファイト・コレオグラファーに迎えて撮ったアクション映画。
監督のドン・マイケル・ポールは俳優出身で、『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』では脚本を手掛けていた。TVシリーズの演出経験はあるが、映画の監督はこれが初めて。
サーシャをセガール、フォーティナイナーズのボス(ワン)をモリス・チェスナット、ニックをジャ・ルール、その右腕(シックス)をニア・ピープルズ、フエゴをトニー・プラナ、トゥイッチをクルプト、リトル・ジョーをマイケル・"ベアー"・タリフェロ、ウィリアムズをクローディア・クリスティアン、マクフェアソンをリンダ・トーソン、レスターをブルース・ワイツ、ケスラーをマイケル・ マクグレイディーが演じている。
ワイドは、テキサス州の高速道路の車線がどのよう
ジョエル・シルヴァーが製作した『ロミオ・マスト・ダイ』『DENGEKI 電撃』『ブラック・ダイヤモンド』という3つの作品がある。これらは全て、黒人の観客層を狙ったアクション映画だ。ダブル主役の片割れに黒人ラッパーを起用し、BGMはヒップホップ。そして格闘アクション俳優をダブル主演の一方として使うというパッケージで作られている。
その内の1本、『DENGEKI 電撃』で主演したスティーヴン・セガールが、そのジョエル・シルヴァー印のコンセプトをまんま拝借して製作したのが、この映画である。だから明らかに『DENGEKI 電撃』を意識した邦題の付け方は正しい。しかも内容もセガール主演映画のセルフ・パロディーみたいになっていたりする。
ただしパロディーといっても、当然のことながら笑いを取りに行っているけではなくて、そこはマジなアクション映画として作っているわけである。その結果として、『DENGEKI 電撃』を全ての面においてチープにしたB級アクション映画が出来上がった。
いや、だからといって「コメディーにすれば良かったのに」と言いたいわけじゃないよ。
ブルーボネット祭り大理石が低下
チープの一端を挙げると、例えばFBIの潜入捜査官という設定の使い方。
普通、そういう設定があれば、「いかにバレないように動くか」という部分でスリルを生じさせようとするものだろう。ところが、そういう展開は全く無いまま、悪党一味との対決モードが進行していく。
で、サーシャがあっさりと「実は潜入捜査官だ」とニックに明かして、特に問題も無く話は続行される。そういうことであれば、サーシャか潜入捜査官という設定の意味が無いんじゃないか。「悪党一味と戦う」という部分においては、サーシャが潜入捜査官であろうとなかろうとそれほど大差は無いのだ。
そもそも、潜入捜査の目的はソニーを捕まえることだが、そのソニーはプロローグを過ぎると全く関係の無い存在になっている。例えばサーシャが潜入捜査官ではなく本当に自動車泥棒だったとしても、特に支障があるとも思えない。
まあ、ただの自動車泥棒にしては、あまりにも貫禄がありすぎる気はするけどね。ただ、ニックの友人という設定も無茶を感じるしなあ。
っていうか、自分で製作している割に意欲は旺盛でもなかったのか、セガールって完全なるオッサン体型になってないかい。
"ブリッジ滝"シンシナティ、オハイオ州
潜入捜査官の設定の無意味さとも関係があるが、ウソ発見器に掛けられたりウィリアムズと銃撃戦になったりするプロローグは、要らない気がするぞ。
仮に潜入捜査官という設定だとしても、いきなり刑務所に入る所から話を始めてもいいんじゃないか。刑務所に入る前に、どうしてもウィリアムズやニックを登場させておかないと困ることって思い付かないし。
銃撃戦で撃たれたサーシャが仮死状態に陥ったという設定も、別に無くたって構わないような程度のモノだし。
セガールの意欲が薄かったのか、それを監督が見抜いたからなのか、どういう理由なのかは知らないが、セガールは大して活躍していない。
普段なら、圧倒的な強さで悪党一味をボコボコにしまくっているだろうに、今回のセガールはなぜか控え目。特に前半は、倉庫の銃撃戦と悪党一味の刑務所強襲の2つのアクションシーンがあるが、どちらにも全く関与しない。
じゃあ後半に入ってから盛り返すのかというと、そういうわけでもないし。
ではセガールに限定せず、アクションシーン全体の出来映えはどうなのかというと、これまたピリッとしない。何より理解し難いのは、わざわざ香港からション・シンシンを招聘しておきながら、大半をガンアクションにしていること。セガールは格闘アクションも見せるが、いつも通りの合気道アクションだし。ション・シンシンを招いた意味を感じさせてくれるのは、ニア・ピープルズがジャ・ルールとタイマンでファイトする1シーンぐけらいのモンじゃないかな。
冴えない作品の中で光を放っていたのが、そのニア・ピープルズ。わずか1シーンだが、黒いロングコートを翻しながらジャ・ルールと格闘するシーンは、かなりカッコイイ。彼女のアクションシーンを、もっと増やして欲しいと思ったよ。ちなみに、かな� �若く見えるし、たぶんキャラ設定も若いと思うんだが、1961年生まれだから41歳なんだよな。すげえな。
話としても、かなり苦しいものがある。悪党一味は金塊の隠し場所を探すためにレスターを「殺すぞオラ」と脅すのだが、どうせ処刑寸前なので、全く意味が無い。そこで処刑を見守っている関係者を殺してレスターを脅すが、そんなことで白状するはずもない。そこで、悪党一味は判事を人質にしてFBIに脱出用ヘリを要求するという、目的が何なのか良く分からないことになってしまう。
クライマックスは、なぜか刑務所から離れて空の上。悪党一味が判事とレスターを連れてヘリで逃亡し、セガールもヘリで追い掛ける。悪党一味が判事を海に放り投げたので、セガールが空にダイヴして助ける。これがセガールのラスト・アクション。ってことは、つまりクライマックスは悪党のボスとの戦いではないということだ。 span>
セガールが判事を助けた時点で、まだ悪党のボスは生きている。
では、どうなるのかというと、レスターが腹に巻いた手榴弾を使って自爆し、悪党を巻き添えにする。主人公のセガールが悪党のボスを倒すのではなく、相棒のジャ・ルールも全く関わらず、レスターが自爆して倒すってことよ。
なんだ、その腑抜けた締め括り方は。
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