2012年6月3日日曜日

大失業時代の「仕事につながる資格」選び10ポイント[絵文録ことのは]2009/02/13


現在、世界的な大不況の中で失業が問題となっているが、その中で職を得るために「資格」を取ることは一つの選択肢となるだろう。何らかの資格・知識・技能を身につけ、手に職を持つことで、よりよい仕事を探したいという人は少なくないはずである。

また、仮に仕事を失ってしまったとしても、その間(仕事探し以外に)することがないというのでは、時間がもったいない。その期間を、自分の成長のための投資期間とすることができれば、人生において有益というべきだろう。

しかし、世の中にはいろいろな資格が溢れている。その選び方を間違えると大変なことになる。そこで、「仕事につながるか否か」という観点からの「資格選び」のポイントを10項目にまとめてみた。これは一部、自分自身のここ数年の体験にも基づくものである。

(この記事は、すぐに仕事につながらない資格について否定するものではありません)

■大前提:その資格は、仕事につながりますか?

最大のポイントにして結論とも言えるのだが、資格は何のために取るのか。

資格マニアや「生涯学習の一環」「教養を高める」という目的であれば、別に何の資格だってかまわない。楽しく知的向上を目指して、好きなことを学んで、最終的に資格を取ればいいのである。

しかし、仕事が欲しい人にとって、資格は「仕事に直結する」ものでなければ、あまり意味がない。「あまり」というのは、そこで学んだ知識がまったく役に立たないというわけではなく、どこかで役立つこともあり得るからである。仕事の幅も広がるだろうし、決してムダととらえる必要はない。しかし、生計を立てる仕事に結びつけるという目的を考えれば、やや遠回りと言わざるを得ないだろう。

その資格は本当に仕事に結びつくのか。また、その資格で就くことのできる仕事は、収入や待遇面で自分の希望に合うのか。それをしっかりと見極めるためのポイントを以下にまとめてみた。

■01:「業務独占資格」は最強だが検討は必要

なんと言っても強いのが、「業務独占資格」である。

「業務独占資格」は、その資格を持っていないと業務を行なうことができない資格である。たとえば、医者は医師免許、弁護士は司法試験・司法修習が必要である(原則として)。その仕事をするには、資格がどうしても必要であるから、「資格取得=仕事ゲット」に近い。

ただし、業務独占資格にもピンからキリまであって、たとえば「土地改良換地士試験」に合格したとしても、「農用地の集団化に関する事業」という非常にニッチな業種にしか携われない。

独占資格でも、資格によってはそもそもニーズ=求人が少ない可能性がある。また、医師や弁護士などの「高給」イメージのある業種でも、医師不足のために仕事が過酷だとか、弁護士過多で仕事がないとかいった例もあるから、一概に「業務独占資格だったら安泰」とはいえない。鍼灸・マッサージなどもこの「業務独占資格」である。

また、独占資格は取得のための勉強にかかる時間と費用が大きくなる。何か簡単な仕事をやりながら勉強し、資格をとってから本格的に転職することを考えてもいいかもしれない。


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したがって、まず求人がある中から「自分がやりたい仕事」を検討し、その仕事には業務独占資格が必要だということがわかれば、その資格取得の難易度も考慮した上で、その資格の勉強をする――という流れが妥当である。

→業務独占資格整理表(首相官邸サイト内)PDFファイル

→業務独占資格 - Wikipedia

■02:「名称独占資格」は必ずしもおいしくない

「名称独占資格」は、資格を持っていなければその名称を名乗ることはできないが、別に資格がなくても(その名称を名乗りさえしなければ)その仕事をしてもかまわないというものである。たとえば「保育士」「中小企業診断士」の資格を持っていない人が保育や中小企業診断をやってもよいが、その資格を持っていると名乗ってはいけない。

もちろん、保育士採用の面接で、資格を持っている方がはるかに有利であることは間違いない。それは、知識などがある一定のレベルを超えているということを証明できるからである。

名称独占資格は、その有資格者と名乗れるというメリットはあるし、その知識を持っていることは強みではあるが、それだけでは心許ない資格でもある。少なくとも、その資格を取れば仕事になる――と短絡的に考えない方がいいだろう。

■03:「設置義務資格」は仕事先のニーズに合わせて

「設置義務資格」というのは、ある事業をやる場合に必ずその有資格者がいなければならないという資格である。

たとえば人気の宅建(宅地建物取引主任者)では、不動産業の事務所に一定数以上の「宅地建物取引主任者」(資格試験に合格し、知事の登録を受け、主任者証の交付を受けた人)がいなければならない。

ということは、ある不動産屋さんが事業を拡大して事務所を増やそうとしているようなとき、宅建の資格者であれば「ぜひ来てください」と言われることになる。

しかし、逆に言えば、宅建の資格者は一定数いれば十分なのだ。だから、新規事務所を開拓しようとしているわけではない不動産屋さんなら、宅建の資格は特に必要なく(知識がないよりあった方がいいのはもちろんだが)、営業が上手であるなどの才能があればまったく問題ないということになる。

「旅行業務取扱管理者」は、旅行業の営業所に必ず一人以上置かなければならないことになっている。そして、その資格を有しているということは、当然、旅行に関する仕事についてプロフェッショナルな知識を持っているということになるから、資格のための勉強をすることは決してムダではないのだが、別に旅行会社で働くために必須の仕事というわけではない。旅行会社の人に聴いてみたら、これは旅行会社への就職を考えている就活生がよく取ったりするけれども、実務上は別に必要ない資格だということだった。

あれば便利だがなくても何とかなる、という点では、設置義務資格は重要度が低くなる。

■04:公的資格は「仕事」より「勉強」のつもりで

以上の3つは国家資格について述べたが、次に公的資格がある。民間団体が主催し、官庁が認定するものだ。

ふぐ調理師やビル経営管理士などは実務経験が求められるので、仕事を得るための資格というよりは、キャリアアップのための仕事といえよう。


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それ以外の資格は、一定の能力を示す指標として公的に認められたものではあるが、それだけで何か仕事になるとは思わないほうがいいだろう。「簿記検定」も1級か2級であれば履歴書でやや有利かもしれないが、それだけで何とかなるわけではない。秘書検定、情報検定なども、その知識を身につけているという証明にしかならない。漢字検定などは(校正会社などならともかく)求職の役に立つ資格とはいえまい。

あくまでも自分の能力や知識を高めるための資格だと割り切り、仕事を手に入れるために役立つとは考えない方がいいだろう。

■05:仕事に直結の民間資格は見逃すな

ピンからキリまであるのが民間資格だ。一体何の役に立つのかわからない資格から、興味があるならなんとしてでも取るべき資格まで、まさに玉石混淆である。

民間資格の中でも、たとえばある店舗で働くためには、その企業のスクールの卒業生でなければならない、というような場合は、その資格を取れば仕事に直結すると考えられる(というより、研修費用を払わされることにはなるが、仕事はもらえることがはっきりしている)。途中でくじけなければ仕事には直結するので、実際に働いている人たちの様子も見つつ、資格取得を検討してよいだろう。もちろん、働いてからの福利厚生や最低給料などもチェックする必要がある。

このように、そこで働くことを前提とした民間資格は非常に有益である。たとえ一時的に高額な受講料がかかるとしても、受講料と給料を比較したときに、数か月、半年、一年働けば回収できることがわかれば、決してマイナスではないし、手に職をつけるという意味でもよいルートだといえる。

■06:仕事に直結しない民間資格に惑わされるな

民間資格でも公的資格でもそうだが、「仕事に役立つ」とか「独立もできる」と書いてあっても、必ずしも仕事を斡旋してもらえるとは限らない。むしろ、仕事の紹介をすると明記していない場合は、ほとんどの場合、その資格を取っても何の仕事にもならないことが多い。

私自身も、カラーコーディネーター、色彩コーディネーター、アロマテラピー・インストラクターの資格を取った。それぞれの資格の説明には、この資格をとって活躍していますという人たちの体験談が挙げられていたが、いずれもそれだけでは何の仕事にも結びつかなかった。もちろん、これらの勉強をしたことは自分自身にとっては非常に有益であったが、資格をとってもそれだけでは何の仕事にもつながらなかったのである。

すでに関連の仕事をしていてキャリアアップ(あるいは自分の技能向上)に結びつけるというのならともかく(確かにウェブサイト構築の仕事で、カラーコーディネーターの資格は「箔がつく」という効果はあった)、資格を取ったからコーディネーターとして働けるというものではないことには注意が必要である。

もちろん、これらの資格がまるでムダだというのではない。その知識はきっと生かせるだろう。しかし、こういったタイプの資格の場合、資格を取りさえすれば仕事になるという甘い見通しは捨てるべきなのである。

また、中には仕事に直結するといいながら仕事にならない資格、仕事の待遇があまりにも悪い資格などもある。このあたりをきちんと調べるのは、自己責任ということになるだろう。


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■07:語学をやるなら目的を明確に

英語でも他の何語でもいいのだが、語学ができることは魅力的な能力である。しかし、「仕事を手に入れる」という観点からすれば、自分のやりたい仕事に語学が密接に関連していない限り、語学力が役立つとは限らない。

たとえば外資系の企業などを狙っているのであれば、語学力は魅力的な技能となるだろう。しかし、日本語だけでも十分な仕事の方がはるかに多い。

語学力を生かして仕事ゲット・給料アップができる業種・職種なのかどうか、まずはそこから考えるべきである。英語ができたらいい、というだけでは動機としても弱いし、明確なメリットがなければ長続きもしないだろう。逆に、語学を生かしてこういう仕事をする、というヴィジョンが明確なら、腰を据えてじっくりと勉強すべきである。

■08:「ワード・エクセル・パワーポイント」ができれば強い

このブログを読んでいる人たちはおそらくパソコン技能の高い人たちが多いと思う。だからこんなことを言うと驚かれるかもしれないが、「ワード・エクセル・パワーポイント」の基本操作がきちんとできる人というのは、日本においては実は少数派なのである。これができれば事務職でも強い立場にいられる。

よく電車の中で、マクロの使い方などを教えてくれるパソコン学校の宣伝があるが、それはさらなるキャリアアップを目指す際の目標であって、そこまで技能がなくても大丈夫である。ワードで文書を作り、エクセルでマス目を埋められれば、「パソコンはあまり……」という人よりも優位に立てる。

そんなレベルなのか、と思われるかもしれないが、IT企業でなければそんなレベルである。さらにブログが作れます、ホームページが作れます、などといったら、パソコンオタク視されるのがネットになじみの少ない「一般社会」の現状なのだ(多少大げさに言っているが)。

■09:「○○検定」は趣味の範囲。仕事とは切り離す

最近はやりの「○○検定」だが、そのほとんどが「実務的には」役に立たない。もちろん、知識を増やし、楽しく学ぶという効果はあるし、それはもちろん意味のあることなのだが、仕事につながることは(ほとんど)ない。

たとえば「江戸文化歴史検定」というのがあって、「2級以上の合格でANAスカイホリデー「感動案内人」プラン現地ガイド応募資格を取得」と書かれている。ところが、よく読むとそれは「ボランティアガイド」である。旅行を企画してガイドしてみたい、という夢は叶えられるだろうが、それで食っていけるわけではない(わたしはこの資格を否定するものではない。むしろ、おもしろそうだと思う。しかし、本業にはできないという現実を述べているのである)。

■10:納得の上で資格を取ろう

ある民間資格がある。その資格には一次試験と二次試験がある。二次試験は一次試験よりかなり難易度が高い。ところが、資格を実施している協会認定校の講座受講生は二次試験免除となっている。聞くところによると、認定校で結構高額な講座を受講させるために、二次試験をどんどん難しくしているらしいという噂もあるとか……。


その資格に十分な価値があると思えば、一発合格も夢ではない認定校→二次試験免除コースをとればいいだろう。あるいは、協会の思うつぼにははまらないぞ、と思う人は、数回のチャレンジになるかもしれないが、独学で難易度の高いコースを選べばいい。それに納得いかないなら、あとで文句を言う前に、資格取得をやめるべきだ。

資格を取って実際に役に立つ、たとえとれなくても(あるいは仕事に結びつかなくても)勉強することがムダではない、と思えるならよいが、その確証が持てないような資格には手を出さないことである。

世の中には詐欺に近い資格商法もある。事前にじっくりと検討するのは自己責任の範疇である。まずはだまされないように、賢明な消費者になろう。

■結論

「ライセンスが取れますよ」や「この資格を取って活躍している人たちがいますよ」だけではなく、「この資格でこれこれの求人をしています」というところまでちゃんとカバーされているかどうかをチェックすること。あるいは逆に、求人情報で「この職にはこれこれの資格が必要です」と書かれている資格を検討してみること。

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